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かもめのジョナサン

傍らの何かを通したエッセイを。

エッセイ

クレープを二度食えば

たいてい、過去に戻ることを誰しも一度は望んだことがあると思う。タイムトラベルはフィクションのテーマとしてもベタであり、ウェルズの小説や改造したデロリアン、或いは青色の猫型ロボットのひみつ道具、近年では運命石の扉を連想するだろうか。ここで挙…

夜は短し歩けよ乙女

まもなく桜が咲く頃である。 全国津々浦々、中には京都の大学に進学を決め、森見登美彦氏の作品のような煌びやかな大学生活を期待している方々も在るだろうが、氏の主人公から学力と物語性を剥奪したような人間だと道すがらに他人から詰られる私から言わせて…

青少年のための自殺学入門

体調のバロメーターをどのようにして測るかは各々だと思うが、ぼくの場合は食欲が忽然と消える。脳の電気信号は大火の如く、空腹だと警鐘を鳴らし続けるのだが、悲しいほどに喉を通らない。代わりに雑に酒を呑むようになってしまう。カロリーだけはある。 し…

キッチン

ぼくは人一倍、食い物に対しての執着が強いと思う。飢えて育った訳ではなく、むしろ食生活は恵まれていた方だろう。そんな遺伝的形質のルーツは奇しくも同じで、この小説において故人でありつつキーパーソンでもある祖母らしい。ぼくの場合は父方の方の家系…

世界は密室でできている

息苦しくなるようなタイトルだと思うが、解き放たれたようなカタルシスが肝の小説だ。デビュー作である煙と土と食い物で舞城王太郎に抱いた印象は旋風のようにひょうひょうとした文体でありながら、堰を切った堤からの鉄砲水のような質量もあるというのがひ…

重力ピエロ

掃除の一環として、溜まっていた書類を焼いた。常識的なコンプライアンス上では外部に持ち出すなど以ての外というべきような事が記された書類なのだが、当たり前のように手元にあった。デリケートな内容であり、裁断するだけでは不十分だと思い、庭にコンク…

かもめのジョナサン

季節が巡るに従って、読みたくなる本というものがいくつかある。 たとえば全世界的にUFOの日には空に消えていった少女と再会したいと思うし、それから少し過ぎて梅雨がようやく開けそうかという清々しいとは言い難い夏の日には雑司ヶ谷で起きた事件を振り返…

ロボット・カミイ

在職中、趣味を尋ねられて読書だと答えると怪訝な顔をされる事が多かった。こうしたことに限らず、彼らの価値観にそぐわない返答をすると途端に不機嫌になるから不思議である。しかしながら稀に同僚、或いは客の中から「子どもに本を読むようになって欲しい…

ボトルネック

ぼくは「ボトルネック」という言い回しをよく用いる。社会問題を論じるときや、他人を皮肉るときに便利な言葉だからだ。周りにシステム設計や情報技術、或いはミリタリーに精通している人が片手で数えれるほどしかおらず、この言葉の意味を分かっていないと…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹に最初に触れたのは確か中学生になったばかりの頃だったと思う。小学生のときは足繁く通っていた図書室に、学生服に腕を通してからは訪れることがなかった。そこへ国語の授業の一環で行くこととなった。木陰が蝕んでいて薄暗く蔵書数も心許ないなと…