かもめのジョナサン

傍らの何かを通したエッセイを。

美女と竹林

私はたけのこが好きだ。補足すると食べ物としての話である。近くの畑から風に運ばれて、庭に根ざした山椒の葉で作る木の芽和えは恒例行事である。

 

だが、竹には良い思い出がない。私は九州の地方都市出身であるために、竹林に闖入することも決して珍しくなかった。幼馴染の自宅の裏にある山にもみっしりと青々とした竹が犇いていた。

 

ちょうど梅雨に差し掛かろうかという時期の頃である。

まだ十代になったばかりの初々しい我々は、竹林の間を切り開き、秘密基地という名の庵を作ることを画策した。既に開拓した河原では、先住人である浮浪者に乗っ取られるという奇異で苦い経験がある。次こそは轍を踏みまいと意気込み、川ではなく山だと忍びの合言葉のような安易な発想を持ち、菓子を片手に押し入った。

 

当たり前だが、その竹林は手入れなどされていない。人が寄り付きもしていない。冴えていると当時の我々が拳を強く握りしめたのは言うまでもない。各々が竹をなぎ倒し、数人が落ち着ける空間を確保すると段ボールを持ち込み、なんとも暑苦しい空間が完成した。

一息をついたところで、我々は充足感を得て、友人の自宅へと赴いた。互いの労をねぎらってはいたが、そこはやはり子どもである。そのまま行った対戦ゲームの結果で不穏な空気を得て、言語化しにくい感情のまま帰路に着いた。

 

翌日のことである。

空は雲一つない晴天だった。阿呆に阿呆を掛け合わせた当時の私でも、雨が降るとあの場所は駄目になってしまうと理解していたのだ。昨日こそ殴り合いの手前にまで行った連中と共に、放課後、菓子を片手に秘密基地へと足を運んだ。

 

浮浪者の姿はなく、秘密基地は無事に保っているように見えた。私が腰を下ろし、幼馴染も寝転がり、最後の一人が座った瞬間に悲鳴を上げた。

何事かと思い、言質を取ると彼は半泣きでこう言った。

 

「尻に竹が刺さった」と。

 

昨日から地で息を潜めていた竹は、一夜にして段ボールを貫通し、彼の急所を攻め立てたのだ。

 

——故に登美彦氏と異なり、竹林があまり好きではない。不届き者である私にはいつか尻に竹が刺さるような気がしてならないのだ。

余談だが秘密基地は翌日、雨で駄目になってしまった。

尻を刺されたのは結局一人だけだった。

 

美女と竹林 (光文社文庫)

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